このチームは後半のシャッフルディスカッションの後、締切間際にそれまでの「ぶどう案」を引っ込めた。何があった?

チームメンバーのリフレクションと木村の感想は一番下にあります。


10:30〜14:00 ディスカッション・現地調査・ランチ・説明用デザインラフ--------------------------------------------

10:50


12:58


13:52


13:32



14:00 シャッフルディスカッション(前半)開始-------------------------------------------------------------------------------------------------------------

14:25


14:30 シャッフルディスカッション(前半)終了-------------------------------------------------------------------------------------------------------------

14:30〜15:30 デザイン制作

15:20



15:30〜16:00 シャッフルディスカッション(後半)-------------------------------------------------------------------------------------------------------------




16:00〜17:00 デザイン制作
------上のディスカッションのメモに「ぶどうが良い」という声もあるが、反対意見にもすべて忠実に応えようとしたのではないのだろうか。

17:00 完成



メンバーの野秋君のブロブ(前編:事前調査)から一部引用すると…
●パンの香ばしい匂いで人を誘い込み、ひとたび足を踏み入れると色とりどりのバラエティに富んだ洋菓子のストリートに通じていて、
 目と鼻が喜んでいるうちに最奥の期間限定ショップのところまで来てしまう、という工夫されたお店の配置が印象的に残りました。

同じく彼のブログ(中編)では、
●僕らは魅力を「絵」として伝えることに意識が偏りすぎて、「誰かにとって役立つ情報」を伝えていない。
 おいしい匂いや活気も大切だけれど、これを見た人が魅力を感じて行動を起こせる情報がなければ、それはInformation Graphicsではないのでしょう。

彼の3編のブログ(最下段参照)で変化していく様子を述べられいるが、みんなから好印象だった「ぶどう案」で押し進めてほしかったな。
最初に「パンの香ばしい香りで人を誘い込み…工夫されたお店の配置が…」に
よく考えられた引き付ける魅力を感じたはず。
ぶどうの実一つずつを魅力に考え、交通の利便性まで実にしてしまうと、ランダムに魅力の実が付いているだけのぶどうの房になってしまう。
交通の利便性は実でなく蔓(山手線や駅など)にし、蔓に近いところ(店の入り口)から実際の店と同じようなイメージで実を配置すると、下の一個が最奥の期間限定ショップか。
パンの香りに誘われてつい奥まで誘導されてしまう、そんなモデルコースを想定しても良かったのでないだろうか。
その誘導の魔術が「魅力を伝える情報」と考えられないか。

講評時に「折角、ハチ公の地下なんだから」と伝えたように、地上のハチ公広場とその下に広がる地下のぶどうの房が立体的に駅に絡んでいる姿は想像しただけでもおもしろい。
もう一歩進めると、私だったら、ぶどうをそっくりそのまま蟻の巣に変える。ハチ公のすぐ横に蟻の巣の入り口(大階段)があって、そこからパンのいい香りが上がってくる。
ハチ公は思わず鼻をヒクヒクさせながら地下の様子を覗き込む。ハチ公の視線からこのページが始まるという仕掛けはどう?


また、同じチームメンバーの松本さんのリフレクションには…
●今思えば、あの形態でも方角感であるとか、距離情報であるとかの情報を加味すれば、面白いインフォグラフィックスとして成り立ったかもしれませんが、
 取材時点で、最終形をイメージしきれていなかった為、記入する情報を準備しきれていなかったと思います。
●アウトプット等を検討していく過程で、「場の特徴」を見つけ出して絵にするには、観察よりも「自分の体験」から引っかかりを見つける方が重要と感じました。
 やはり自分の視点を加味する方が、本当に「面白い」ものに繋がるな、と。客観情報のみだと、既にパンフ等でやりつくされているので。

このチームは、賛同聞き役からなかなかいい印象を伝えられながらも、異見聞き役や、特に講師の一声によって最後の最後にぶれてしまった。

----ぶどう案の発案者の上記の松本さんに詳しく聞いてみるとこういう経緯らしい。
●講師の一人から「読者の役に立たないのでは?単なるイラストにしかすぎないのでは?」という感想をもらい、インフォグラフィックスの定義に確固たる自信がなかったのと、
 交通利便面が表現できないなど問題点の、良い表現解決ができなかったのとで段々と、そうなのかも…という気持ちになってきた。---(中略)---
 どちらかというと講師から頂いた問題点から、安易に解決しようとして情報過多になってしまったり、「道」の切り口を表現すると地図に見えてダメなのか?と迷ったりと、
 行き詰っていた部分が大きい。---(中略)---

 
ただ、皆気に入っていた案だったので、ギリギリまで捨てない為の努力は精一杯やり議論もしたが、客観情報の表現のやり方で煮詰まり右も左も動かなくなっていたので、
 どの道あの案は完成させられなかった。そこでブレイクスルーできるかどうかが、力量の差だ。


自分たちが決めた道、でもみんな疑問を持って歩いていたのだろう。けれども、こんなに引き返さなくても……。
私は方角は間違っていなかったと思う。ただ霧がかかっていてちょっと視界不良だっただけ。みんなで吹き払ってほしかったなと思う。

ここで講師のアドバイスについての私の考えを述べておこう。
講師は、情報を分かりやすく伝える表現という方向性は同じでも、講師全員が同じ意見、同じアウトプットを想定しているとは限らない。
いくつかの意見の中から、全部ゼロにするのではなく、いい変身ができるヒントをもらえばいいのではないだろうか。
また、講師がああ言っているから、と絶対になってしまい、チームから生まれた「良いものに変わるもの」まで簡単に捨てられては講師の意図と逆行する。

上記の
「読者の役に立たないのでは?……」は、ただ情報を並べただけのものならFoodShowの店先に置いてある各店舗の案内図の方がよっぽど情報として優れている。
でもそれが雑誌に見開きで出ていても魅力がないから誰もも引き付けることはできない。だからそれを一歩進んだ展開に変化させることはできないのか?ということだと思います。
私はあそこまで変えずに、各要素を整理すればこれは解決できたと思っています。

第三者の意見や印象はしっかりと聞いても、それを取り入れる・取り入れないかは、そのチームの問題。
ぶれない大黒柱を立て、棟上げをしたら、あとはその家に似合うインテリアを楽しみたい。
シャッフルディスカッションはそれをかなえるDIYショップと考えよう。


同じメンバーの福聚君はブロブで機能性と魅力についてこう述べています。
●最終作品は魅力を伝えるという点があまりにも欠けていました。・・・特徴は魅力になるとは限らない。アウトプットの仕方で、それは魅力になったのかもしれないけど、
機能性を重視して魅力が落ちてしまいました。機能性も魅力もあるところにデザインを落とし込む。その難しさを今回は強く感じました。



・Food Show team 野秋君のブログ
  Conversation Place インフォグラフィックス・ワークショップ1に参加して 前編:事前調査
  Conversation Place インフォグラフィックス・ワークショップ1に参加して 中編

  Conversation Place インフォグラフィックス・ワークショップ1に参加して 後編

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写真のほとんどはオブザーバーの浅野さんからのご提供です。